朝日が差し込み始めて羊飼いは羊たちを太陽の方向に導いた。「彼らは何かを決断する必要なんてずっとないんだ」と思った。「ひょっとしたらそれでいつも僕のこんな近くにいるのかもしれない」。羊たちが感じている唯一の必要は水と食べ物だった。少年がアンダルシアの一番の牧草地を知っている限り、彼らは彼の友人であり続けるだろう。日々はいつも単調で日の出から日暮れまで長い時間がだらだら続くだけだが、また決してその短い生のうちに一冊の本だって読んだこともなければ村々の出来事を語って聞かせる人間たちの言葉を知ることもないが、彼らは彼の食べ物に満足していたし、それで十分だった。その代わりに、気前よくその羊毛、その仲間、そして――時として――その肉を提供していた。
「もし今日僕が非道になって一匹ずつ殺すことにしたら、彼らは群れがほぼみんな全滅した時になってようやく気付くんだろうな」、少年は思った。「だって僕のことを信じているし自分自身の本能を信じることを忘れてしまっているから。水と食べ物まで連れていくから。」
少年は自分自身の考えを訝り始めた。ひょっとしたら教会は、そこで育つシカモアイチジクもろとも、魔法にかかっているのかもしれない。 二度目の同じ夢を見させ、いつだって忠実な仲間たちに対して嫌悪の感情を生じさせていたのだ。前夜の夕食で残ったワインをもう一口飲んで、身体を上着にねじ込んだ。数時間もすれば、太陽が高くのぼり、暑さが厳しくなり羊を連れて野を行くことができなくなるとわかっていた。夏のあいだスペイン中が眠る時間だった。暑さは夜まで続いてその間ずっと彼は上着を持っていかなければならないのだ。だが、その重みに不満を抱くときには、これのおかげで朝の寒さを感じないのだということにいつも落ち着くのだった。
「いつも天気の不意打ちに備えていなくちゃね」、そう思い、上着の重みに有難みを感じていた。
上着はある意図を持っていて、少年もそうだった。アンダルシアの大平原の二年にわたる歩みを経てその地方のすべての町々は記憶に刷り込まれており、そしてこれは彼の人生の大きな理由だった。旅をするということ。今回は少女になぜただの羊飼いが読むことを知っているのか説明しようと思っていた。十六歳まで神学校にいたのだ。彼の両親は彼に司祭になってほしがっていた。羊たちのように、食べ物と水を手に入れるためにどうにか働いているような、田舎の平凡な家族の誇りになってほしかったのだ。ラテン語、スペイン語と神学を学んだ。しかし子どものころから世界を知りたいと夢見ており、これは神や人々の罪を知ることよりもずっと重要なことだった。ある午後、家族を訪ねた際、勇気を奮い立たせて司祭になりたくないと父に言った。旅をしたかった。
~続く~
神学校でラテン語とスペイン語と神学を学んで、司祭になりたくない、旅したい、かー。
これ、自分の身に置き換えて、わかるような気がする。いろんなことを積んできたけど、これからの生き方は、これまでの生き方に縛られたくない。そして僕も、旅をしたい。世界を知りたい。
少年の場合はもともと旅をしたかったところを両親の意向で神学校に行っていたので、親に何でも好きにさせてもらっていた僕とは全く違うわけですが・・・。
しかしこれ両親のほうは、えーーーまーじでーーーー、て感じだろうなあ。旅てーー、おーーーい。まーじかーーーい。だろうなあ。
ぷーて!というツッコミが飛んできそうなのでこのへんで。