錬金術つかい(寛訳13)(“El Alquimista”)

『あの老人に会った時間はなんだったんだろう』、と思った。夢を解釈する女性に会いに行っただけだった。女性も老人も彼が羊飼いであるという事実を重要視していなかった。孤独な人たちで、もう人生をあてにしておらずまた羊飼いがその羊たちを好きになっていくものだということを理解していなかった。彼は彼ら一匹一匹の細かいことまで知っていた。どれが足を引きずっているか、どれが二か月もすれば子供を産むかそしてどれが最も怠け者か。どのように毛刈りをしてどのように殺すかも知っていた。もし出発を決めたなら、彼らは苦しむだろう。

錬金術つかい(寛訳12)(“El Alquimista”)

少年は本を読もうとしたが、もう集中することができなかった。そわそわして緊張していた、というのも老人が真実を言ったのだとわかっていたのだった。売人のところへ行ってポップコーンを一袋買いながら老人が言ったことを彼に話して聞かせてやるべきかと思いにふけった。『時には物事をあるがままに放っておくほうが良い』、男の子は思い、そして何も言わなかった。

錬金術つかい(寛訳11)(“El Alquimista”)

『サレムの王だよ』、老人は言っていた。
「どうして王が羊飼いと話をするのです?」、恥じ入りまた大いに惚れ惚れとしながら少年は尋ねた。
「いろいろな理由がある。だけど最も重要なことは君には君の私伝説を成し遂げることができたということだよ。」

錬金術つかい(寛訳10)(“El Alquimista”)

「この世の最大の嘘って何ですか?」驚いて、少年は質問した。
「それはこういうことだよ。私たちの存在の時を定めた途端に、私たちは人生の舵を失い、人生は運命により支配され始める。これがこの世の最大の嘘なんだよ。」

錬金術つかい(寛訳9)(“El Alquimista”)

少年はがっかりしてもう二度と夢なんか信じないと心に決めながら外に出た。いろんなことをしなくてはいけないのを思い出した。食料品店に行って適当な食べ物を買い、本をもっと分厚いものに交換して買った新しいワインの味わおうと広場のベンチに腰掛けた。

錬金術つかい(寛訳8)(“El Alquimista”)

老女は少年を家の奥、色とりどりなビニールの帯のカーテンで居間と仕切られた部屋に案内した。その中には机、イエスの聖心の肖像そして椅子が二つあった。

錬金術つかい(寛訳7)(“El Alquimista”)

地平線は赤く染まりそれから太陽が現れた。少年は父との会話を思い出して幸福を感じた。すでに多くの城や女性を知ることができていた(二日後に彼を待っていたものと同じものは何ひとつなかったが)。上着と、他のものと交換できる本そして羊の群れを持っていた。最も大事なことは、しかし、一日一日その人生の大きな夢を実現しているということだった。旅をするという。アンダルシアの野原に疲れたときには羊たちを売って船乗りになることもできた。海に疲れたときには、たくさんの町々、たくさんの女性たちそして幸せであるためのたくさんの機会を知っているだろう。

錬金術つかい(寛訳6)(“El Alquimista”)

「世界中の人がこの村を通るじゃないか、息子よ」父は言った。「新しいことを求めてくるが、同じ人たちばかりだ。丘まで行って城を認め、過去は現在よりも良かったと信じている。金色の髪や黒い肌をしているかもしれないが、我らの村の人間と変わらんよ。」

錬金術つかい(寛訳5)(“El Alquimista”)

朝日が差し込み始めて羊飼いは羊たちを太陽の方向に導いた。「彼らは何かを決断する必要なんてずっとないんだ」と思った。「ひょっとしたらそれでいつも僕のこんな近くにいるのかもしれない」。羊たちが感じている唯一の必要は水と食べ物だった。少年がアンダルシアの一番の牧草地を知っている限り、彼らは彼の友人であり続けるだろう。

錬金術つかい(寛訳4)(“El Alquimista”)

もう再びその村に着くまでたった四日間というところだった。気分が高揚すると同時に不安にも感じた。もう少女は彼のことを忘れたかもしれない。あのあたりには羊の毛を売りにたくさんの羊飼いが通るのだ。