錬金術つかい(寛訳18)(“El Alquimista”)

ガラス商人は日が明けるのを見て毎朝感じるのと同じ苦悶を抱いた。その同じ場所、買い手が滅多に通らないような坂道の上にある店で過ごしてほぼ三十年になっていた。今や何を変えるにも遅かった。人生でできる唯一のことはガラスを買って売ることだった。彼の店をたくさんの人が知ってくれた時があった。アラブの商人、フランスやイギリスの地質学者、ドイツの軍人、みなポケットに金を持っていた。その頃はガラスを売るのはひとつの大きな冒険であり彼は金持ちになり、年老いたころには美しい女たちを持とうと考えていた。

しかしそれから時は過ぎ去っていき、町もまた同様だった。セウタがタンジェよりも大きく発展して商業は向きを変えた。隣人たちは引っ越して、その坂道にはほんのわずかな店だけが残った。そして誰もわずかな店を見るために坂道を上ろうとはしなかった。

しかしガラス商人には選択の余地がなかった。ガラス商品を売り買いして三十年間生きてきて、そして今や向きを変えようにもあまりに遅すぎた。

午前のあいだずっと路上の動きを見ていた。何年も前からそんなことをしてきてもう一人ひとりの日課を知っていた。昼食まであと数分というところで、妙な少年が飾り棚の前で立ち止まった。普通の身なりをしていたが、ガラス商人の経験豊かな目は金無しだと結論づけた。とはいえしばらくのあいだ待つことにした、少年が立ち去るまで。

~続く~


39分。お手軽。

少年出てこないかと思ったわ!ガラス商人、初登場のくせに一人舞台で終わらせるつもりかと思ってソワソワしたわ。ここまでで2度目の少年目線じゃない節でした。

スペイン語の話としては、ん?と思って調べてみて、ほお!・・・おや??と思ったことがあったのでそれを。

…y ahora era demasiado tarde para cambiar de rumbo.

寛訳:そして今や向きを変えるにはあまりにも遅すぎた。

この文末、cambiar de rumbo、向きを変える、方向転換するという部分。rumboは方向、針路という意味の男性名詞。なんでde rumboで、el rumboじゃないんだろう、と思ったのです。なお西和辞書の例文にはcambiar de rumbo/方向転換する、他方でcambiar el rumbo de su vida/人生の方向転換をする、とある。つまりdeもelもあると。

でこれ、着目すべきはrumboじゃなくてcambiarだったのね。cambiar de +無冠詞名詞で~を替える、変えるという意味になるのだそうです。cambiar de idea/考えを変える、cambiar de autobús/バスを乗り換える、cambiar de trabajo/仕事を変える・・・ などなど。この時のcambiarは自動詞として作用していると。

こういう例文を見ると定冠詞じゃないことがイメージできる感じはする。その考え、そのバス、その仕事、その方向を変える、のではなくて、変えるというところに重心がかかっているというか。変える前のAと後のBが何かは重要ではなくて、変える前と後が違うということに重きを置いている、というか。

また、cambiar una bombilla/電球を取り替える、のだそうです。これはですね、えー・・・なんだ。わからん。unaだと!?ここでのcambiarは他動詞らしい。つまり変える対象が他にある時には他動詞で冠詞をとる、自らにある時には自動詞でde、ということか・・・んーもうちょっとつかめそうでつかめない。おなか減ったからギブアップ。しりきれギブアップ。

写真はコスタリカの首都サンホセ、ヒスイ博物館の作品です。好きなんですこういうのすごく。2017年11月。

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