錬金術つかい(寛訳22)(“El Alquimista”)

人々は坂道を上った後でくたびれて着いた。するとそこに爽やかなミントティーのある綺麗なガラスの店を見つけた。人々は茶を飲むために入り、その茶はガラスの美しい水差しで給仕された。

『僕の妻にはこんなこと全く思いもよらなかったぞ』、ある人は思い、その夜に来客がある、招待客たちはその水差しの見事さに感銘を受けるだろうということでいくつかの商品を買っていった。他の人は茶というのはいつもガラスの容器で出されるとよりよい味わいである、香りをよく保つからと断言した。三人目には茶にガラスの水差しを使うのは東洋の伝統だった、その魔法の力のためにと付け足した。

あっという間にその目新しさは広まり、たくさんの人たちがこうも古い商売で何か新しいことをしている店を知ろうと坂道の上まで上り始めた。ガラスの器の茶の店が他にもいくつか開いたが、丘の頂上にはなく、そのため人気がないのだった。

間もなく商人はさらに二人の従業員を雇わなくてはならなかった。ガラスと一緒に、新しいものを渇望している男や女によって消費されていた莫大な量の茶も、輸入し始めた。

こうして六か月が過ぎた。

~続く~


36分。

最近は2時間くらいかかるつもりで時間割を組み直したので、こんなに早く終わると今日は余裕があるな。うふ。

今節ついに、サンチアゴ少年が一度も出てこないという事態が生じました。どうした少年、ものの三か月でアラブ語を習得したときの寝不足が祟ったか。ゆっくり休みなさい、睡眠は大事。

スペイン語的にもあまり変わったものはなかったと思うけど、少し気になったのはOrienteかな。

Un tercero añadió que era tradición en Oriente utilizar jarras de cristal para el té, a causa de sus poderes mágicos.

寛訳:三人目には茶にガラスの水差しを使うのは東洋の伝統だった、その魔法の力のためにと付け足した。

Orienteっていうのが東、東方、東洋という意味で、ここでは東洋と訳しちゃうことにしたわけですが。そもそもesteという東を意味する言葉があるのに、なぜOrienteまで東なんだろうと。義務教育から「オリエンテーション」っていうのが半分日本語のように遣われていて、全体工程を示すようなものだけれども、それと関係あるのかな。さらにはOrientarっていう動詞まであって、方向づけるという意味がある。なんだ、オリオン座か?いや、オリオン座は冬だけだしどちらかというと南だ。

DLEで調べてみました。現れる、生まれるという意味のラテン語の動詞orīriの名詞形oriensが原型なのだそうです。太陽ですね。太陽は必ず東から上るから、方角としてのOriente/東という名詞ができて、方向づけをするための目印になるということでOrientar/方向づける、Orientación/方向づけという動詞や名詞ができたのですね。うんとても理解できた。

なお対応してPoniente/西という言葉もあります。こちらは置く、下ろす、やめるという意味のラテン語動詞ponĕreの名詞形ponensが原型。やはり、同じく太陽のようです。なおPonienteのほうにはポニエンタールだのポニエンテーションだのといった動詞や名詞はないのだけど、日が昇った時にOrientarするからもういい、日が落ちる時に方角が分かったってもう暗いもん!ということでしょうか。代わりと言ってはなんですが、ポニーちゃんのほうはponerという語がかなりラテン語の原型に近い形で生き残っていて、ラテン語そのままに「置く」ことも「日が沈む」ことも包含しています。だから許してね!

写真はポニーちゃんタイムに包まれるウルグアイの首都モンテビデオ、夕日を背に。このとき夕日に向かって歩いていて、でも頭に入ってる地図では東に向かって歩いている気がしていて(世界地図上ではモンテビデオは南東に開いているように見える)、あれ、東に沈む夕日?南半球だからってそんなことある?コリオリの力めっちゃ強い?とかしばし混乱しました。大丈夫、モンテビデオでも太陽は西に沈んでいました。2017年2月。(なお本文上での太陽の役割はそんなにというか全く大きくないこと存じています。)

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